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季節ごとに咲く花と歴史の転換期

  3月末から7月にかけて多くの町で見かける景色だが、まずは桜が咲き誇り、次に道々の左右に躑躅(つつじ)が咲き誇り、6月には雨が降りしきる中で紫陽花(あじさい)ばかりになり、その後は照りつける陽射しのもと向日葵(ひまわり)の花が増えてゆく。

 

  歴史の転換期を「ものぐさ精神分析」シリーズ著者の岸田秀氏が「対立→移行→逆転→統合」の決まったパターンを踏むと当たり前のように書いたが、例えるなら上記の花のようなものかと思う。

 

  直線史観のヘーゲルは理性の歴史を芽から茎が伸びて葉が増え、蕾になって花が咲き、実になる例を主著「精神現象学」の中で述べたが、円環史観の場合も例えば干支の最初の「子(ね)」が種子のことで、次の丑がヒモ状に伸びる茎、というように植物の成長をなぞり、亥が核の意味で再び「子」に戻る。この漢字には始原の「一」と最後の「了」を合わせたものでもあり、円環の要(かなめ)でもある。

 

  以前、パターンを踏まなければ歴史は円環を成さず留まるか滅ぶようなことを書いたが、たいていは意図的かどうかはともかくパターンを踏むようになると思う。

 

  どの幕末もそうであったように長期政権の腐敗が目立つようになると、憤慨して後醍醐天皇戦国大名薩長雄藩のように対抗勢力が台頭する。前回の転換期の場合はそれが軍部だった。515や226関東軍の横暴などが戦後ではよく指摘されるが、当時は永田鉄山石原莞爾山本五十六など、それなりに賢く優秀な人も多かった。ドイツ軍の英雄「砂漠の狐」ことロンメルヒトラーとは一定の距離を保ったために毒殺されたが、軍人が一概に横暴な訳ではない。

 

  ただこれら新勢力の台頭だけでは収まらず、戦乱や混乱が拡大するだけであり、誰かが古いものを始末し破壊する段階が来なければならない。それが前回の転換期ではマッカーサーであり、あまり詳しく知られていないが、フィリピンからオーストラリアに一旦退却した後に、「アイシャルリターン」の宣言通り、敵の隙間を縫うように南太平洋の島に飛行場を造っては更に北の島に移動し、という「飛び石作戦」で最後は厚木飛行場にパイプを加えて降り立った。そして昭和天皇に感銘を受けて後は財閥解体や農地改革、小作人の解放、レッドパージ東京裁判などの破壊を行い、東條英機を処刑して戦前と明確に区別した。

 

  このGHQとともに政治を進めながらも裏では「Go Home Quickly」(早く帰れ)と思っていた吉田茂首相は、日本を軍事路線から経済中心の路線に変えた3番目の段階に当たる。マッカーサー帰国後も5次まで組閣し、最後はバカヤロー解散で退いたが、この辺りは名作「小説吉田学校」が詳しくて分かりやすい。

 

  タイトルこそ吉田だが、作者の思い入れは明らかに三木武吉の方にある。この老政治家は、鳩山一郎公職追放が解けたら自由党党首に戻す約束を吉田が反故したために怒り、民主党を結成して念願の政権交代を果たすものの、当時ソ連や国内でも社会党共産党が拡大してきたことを危惧して、緒方竹虎自由党党首に保守合同を持ちかけて自由民主党を誕生させた。初代党首となった半身不随の鳩山一郎は泣いて三木老人に感謝したという。

 

 今回の転換期の場合、1980年代後半から目立ってきた自民党長期政権の腐敗に対して、中曽根行政改革でも駄目、その後の大平、鈴木、宇野、海部など小粒な首相でももちろん駄目、そこで15代党首宮沢喜一の時に小沢一郎自民党幹事長は細川日本新党を中心とする野党連合で政権交代を果たした。ちなみに鎌倉幕府執権、室町、江戸幕府の将軍も15代ぐらいで終わっている。

 

  選挙制度中選挙区制から小選挙区制に変えて外国のような二大政党が牽制しあう構図を小沢は目指したが、その試みは結局うまくいってない。細川はすぐに投げ出し、次の半袖スーツの羽田孜の真似をする人は皆無、村山の時に阪神大震災で無能ぶりを露呈、鳩山由紀夫菅直人、野田も特にビジョンはなかった。

 

  こうなると、古いものを破壊する段階がどうしても来てしまう。新田義貞は鎌倉を焼き滅ぼし、織田信長比叡山を焼き討ちして足利義昭を追放し、高杉晋作は第二次長州征伐で山口県が四方から包囲されても奇襲や新戦法で徳川幕府軍を散々に破った。

 

  今回の転換期の場合は、2000年頃から長く政権内に食い込んで、小泉や安倍、菅を使って様々な破壊を行っている竹中平蔵がその段階に当たる。民間銀行、いや外資系金融機関の邪魔になるからと巨大な郵政を解体民営化し、一億総中流を支えた雇用慣行を破壊して自分は派遣会社パソナの会長に収まり、更にTPPも多国籍企業から指示されるまま全国数ヶ所で形ばかりのタウンミーティングを開いて現場よりも外資の都合に合わせるよう持っていきかけた途中、東日本大震災が起こってアメリカ抜きのTPPになった。当時たまたま真近で関わってきた身としては日本の地下の神が怒り震えたように思ったものだ。役人から1本電話があり、新幹線が止まったので仕方なくカラオケボックスで一泊したと言い、またいつか会う機会があったら宜しくと悔しそうに東京に帰っていった。

 

  いや、この竹中平蔵の段階はもういい。そろそろ破壊ではなく、創造を行わなければならない。「弱い企業を保護するから日本は弱くなった」としか言わず、強くする新しい知恵が必要なのに、そんなものはないと竹中は安易に見切っているが。台湾のオードリー・タンのような人物こそ、パターン的には新戦法の楠木正成や秀吉、海舟のような人と共通する。日本ではひろゆき氏かと思ったこともあったが、今日の記事で鼻を噛んだティッシュをそこらじゅうに捨てるという妻の暴露を聞いて、ああ2ちゃんねるもそんな感じだなと思ったりした。

 

  4段階目(三木武吉)の統合補佐役や5段階目(鳩山一郎)の完成の話はまた後日。