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逆転段階はこれから

  歴史の転換期には一定のパターンがある。

 

  逆に言えばこのパターンに沿わなければ歴史は転換せず停滞する。

 

  今がまさにそうである。「失われた10年」が20年になり、30年になっている。

 

  パターンを理解するには、昭和のベストセラー「ものぐさ精神分析」シリーズの中で著者・岸田秀氏が紹介した4段階が分かりやすい。

 

  「対立→逆転→移行→統合」である。

 

  似たようなものには「序→破→急」や「守→破→離」などがある。

 

  この4段階にもう1つ最終段階を付け加えて5段階にしてみる。

 

  「対立→逆転→移行→統合→完成」。

 

  例えば戦国時代の場合、末期的な室町幕府を尻目に各地に戦国大名が群雄割拠して分国法を作ったり相争った段階が対立、織田信長による旧習打破が逆転(織田がつき)、(羽柴がこねる天下餅)が移行、(うまうま食うは徳川)か完成、その間に本多正信のような参謀が統合作業を進めた。

 

  平安時代末期の場合は藤原摂関政治と対立した後白河法王の院政、貴族の世を終わらせた平清盛が逆転、源義経の一ノ谷や壇之浦での活躍が移行、源頼朝が完成で、頼朝を支えた初代執権の北条時政鎌倉幕府への統合を進めた。

 

  同様の考え方で並列していくとこうなる。

 

  大和時代から奈良時代への転換期には、「蘇我入鹿中大兄皇子(大化の改新)→高向玄麿→中臣鎌足天武天皇」。

 

  次は奈良から平安・・・いや、大事なのは現代である。戦前から戦後の転換期の場合、

 

  「東條英機ら軍部が台頭した対立段階→マッカーサーGHQ財閥解体や農地改革を行った逆転段階→吉田茂による経済中心への移行段階→三木武吉自由党民主党を合体させた統合段階→自民党初代総裁になった鳩山一郎の完成段階」となる。

 

  その自民党鎌倉幕府の執権や足利将軍、徳川将軍と同様に15代の宮澤喜一で一旦終わり、細川日本新党が短期間政権をとった。ここに暗躍した小沢一郎は今も政権交代や二大政党制を呼び掛けているので対立段階とは言える。

 

  では逆転段階は誰なのか? 小泉純一郎は「自民党をぶっ壊す」とは言ったが特に何もなく、今も腐敗した自民党は続いている。

 

  その前の橋本龍太郎は省庁再編で大蔵省を財務省に改名した張本人だが、破壊より創造的に近く、逆転段階ではない。

 

  現代の安倍~菅政権では腐敗政治ここに極まれりと言えるぐらい末期的で、人材も枯渇している。だからといって蓮舫たち野党ももう真っ平御免と言われている。まだ小沢一郎は健在だが。

 

  ということは、現状の「腐敗自民と弱々野党」という絶望的な対立段階を打開するどこかの誰かの何かがもしどうにかすると、これこそが逆転段階と言える。

 

  第一候補は菅首相からも壊し屋と期待された河野太郎行政改革大臣だが、印鑑廃止を唱えると全国の印鑑屋から突き上げられておとなしくなるなど、壊し方がセコくてマッカーサーに比べると小さい。

 

  それでは維新の会を立ち上げた口達者の橋下徹か? 大阪の暴れん坊、松井一郎か? 人気者の吉村洋文か? 彼らも大阪都構想で破壊を試みたが2度の住民投票で否決されて敗北宣言した。

 

  ちなみに過去の逆転型には、鎌倉を急襲して滅ぼした新田義貞や、功山寺挙兵後に電光石火で長州の各要所を押さえた高杉晋作などスピードが特徴的で、中大兄皇子の入鹿暗殺や織田信長桶狭間の合戦、平清盛も保元平治の乱では素早く決着をつけていた。

 

  外国に目を転じると、三國志では幼少の皇帝を傀儡にして漢と対立した董卓を破り、官渡では素早く勝利した曹操が逆転、古代ローマでも「賽は投げられた」と叫んでルビコン川を渡ったシーザーも逆転、養子のアウグストゥスは初代ローマ皇帝になったので完成型といえる。

 

  また、ソビエトの最後に書記長となってグラスノスチ(情報公開)とペレストロイカ(改革)を断行したゴルバチョフが対立段階、戦車の上に立ってソビエトを素早く倒しロシアに変えたエリツィンが逆転段階、そして元KGBの優秀なスパイで長期間君臨している現プーチン大統領が移行段階と思われる。

 

  4段階目と5段階目が誰になるかは、ロシアをどんな国にするか、それともどこかと合体したものになるかで見えてくるが、まだよく分からない。

 

  同様な例で日本の思想家集団の場合、既存の学界とは一線を画してメディアにもよく出ていた西部グループの総帥・西部邁が対立段階、西部との共著が多い右腕的な佐伯啓思がただ否定ばかりで新しいものを生み出さないので逆転段階、西部の教え子の中では顔回サーリプッタヨハネ的な感じで今は現代貨幣理論(MMT)を広めようとしている中野剛志が移行段階と思われる。ただこちらも4段階目と5段階目が見えない。

 

  4段階目の人は統合を進める補佐型なので、中臣鎌足北条時政足利直義本多正信薩長連合を進めた坂本龍馬、社会共産の拡大に対して保守合同を行った先述の三木武吉などまあまあな人物が多い。

 

  逆に5段階目の人は完成型としてのお飾りであればよく、源頼朝足利尊氏徳川家康大久保利通など高いカリスマ性が明晰さや破壊性・創造性よりも最も求められる。

 

  3番目の移行型(創造豊かな才あり)はたとえ身分が低くても5段階目の人につけば成功率は高いが、つかなければ源義経楠木正成、秀吉(の豊臣家)や海舟のように途中退場する。

 

  まして1番目の対立型は、後白河法王や後醍醐天皇武田信玄西郷隆盛のように最後の勝利者とはならない。1980年代末から活躍して小選挙区制や二大政党制など対立段階を築いた小沢一郎もそうである。

 

  だから現代は対立の話はもういい。選挙で自民を倒そうなんてのももういい。

 

  病根となる患部を素早く急襲して一気に破壊することが望ましい。新田義貞高杉晋作織田信長のように。

 

  戦前も軍部政権が長引いてなかなかそれが現れず、つまり晋作を最後に日本には出てこず、結局敗戦で東條英機を処刑して対立型の時代が終わった。フィリピン敗戦後にいったんオーストラリアへ撤退し、反転して日本海軍の隙間を縫うように飛び石作戦で各小島に飛行場を作りながら接近してついに厚木に降り立った「アイシャルリターン」のマッカーサーが外国人ながら逆転段階となった。

 

  今度はアメリカ人でも◯国人でも、まして中国人でもない人がいいのだが・・。

 

  そして3~5段階目はどうなるのか? 気長に待つとしよう。

 

※後日追加

小沢一郎宅への東京地検特捜部の急襲は上記のようなスピーディさはあった。

・では小泉竹中は逆転段階だったのか? 確かに日本の雇用習慣を破壊して評判は悪い。

竹中平蔵は今も菅政権のブレーン。菅総理とは郵政民営化という破壊で共闘した。

・菅&竹中&河野で破壊はまだ進むのかもしれず、3~5段階目が待望される。