草分け中

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(この声をきみに)最終回には無理を感じた

 なぜ豪華キャストのこのドラマが深夜帯なのか? 最終回で分かった気がした。

 

 柴田恭兵が朗読教室の主催者、麻生久美子が教室の先生でヒロイン、ただし江崎京子は本名ではなく年齢も不明。主人公の竹野内豊は数学者で小学生の娘と息子がありながら妻(ミムラ)との折り合いが悪く離婚し、麻生久美子と心がつながる。他、教室のメンバーに杉本哲太堀内敬子大原櫻子片桐はいり等。竹野内の父は平泉成。確かに豪華だ。

 

 ふつう深夜帯のドラマは三流の俳優か若手、あるいは落ち目が多く、ストーリーもゴールデンではできない内容のものが多い。このドラマは朗読会という地味な舞台という設定なのでゴールデンにできなかった気もする。ただ、何故そもそも朗読会という設定にしたのか?

 

 最終回で柴田と麻生は言葉の素晴らしさを褒め上げる朗読を行い、その前に竹野内演じる数学者が子供の頃の夢を書いた文を読み、「いつか皆を幸せにする完璧な定理を発見する」話をしてそれぞれ拍手を受けた。

 

 脚本家の大森美香を調べたが、過去の作品はあってもプライベート関係の情報は一切なく、おそらく江崎京子は彼女自身だろうと推察した。しばらく疎遠にしていた家族のところへ戻る話も実話と思う。その際に慰留された経緯から生まれた作品だろう。そして、戻って竹野内のような格好良く声のいい純心な数学者と教会に入るところは願望だろう。妻子持ちの男性は格好よく見えるもので、更に現在の妻と別れることも願望である。

 

 さまざまな形式美を数式で表し、世界中を幸せにする完璧な新定理を追い求める男と、誰からも慕われる朗読教室の教師、つまり文系の女性との高次元の和を説く話だったのだ。そんな自由勝手な話は深夜帯に出すしかない。もしこの実験が好評なら、ゴールデンに出すことも検討するのだろう。

 

 ただ哲学者という言葉の定理を追う者から言わせてもらえば、文学と数学とはそもそも合わないと思う。哲学と文学、哲学と数学という例は多いけれども。