アンパンマンの世界は妖精の世界と言われる。実在の地球ではない。主人公はパン工場を出てパトロールするところから始まる。すると、バイキンマンが誰かを虐めている光景に出くわし、介入する。一時的にピンチになるも、最後はアンパンチで遠くへ飛ばす。これで溜飲が下がる。
ところで、バイキンマンをアンパンチで遠くへ飛ばして話は終わるが、これを捕縛してどこか刑務所にでも閉じ込めておけば、再び誰かが虐められる訳もなく、世の中は平和なはずなのに、なぜそうしないのだろうか? この疑問が浮かんだものの、閉じ込められる悪役がいない訳でもなかった。例えば黒バラ女王がそうである。このキャラは危険度が高いためかもしれない。
バイキンマンは危険度が低いのか? そういえば、彼が欲望のままに奪ったり虐めたりする相手は、たいがい街の中心部ではなくローカル(田舎)の、どちらかというと独りで何かをつくっている特殊なキャラが多い。今でいえば、四国の田舎で青色ダイオードを発明した中村修二や、神戸の島でSTAP細胞を研究し医療に役立つと言った小保方晴子も該当する。
彼らのカネになりそうなニオイから近づくのもバイキンマンだし、おとなしいかと思ったら抵抗されて怒ったり、虐めたりするのもそっくりで、つまりこのシーンを見て最初の溜飲が下がる段階が起きる。しかしもう1つの溜飲が下がるアンパンチでバランスが保たれて終了する。
人間の初歩的な気持ちの流れに沿ったものなのだろう。インターネットの掲示板もガス抜きのようなものだから為政者はそれを設けて放っておく。
しかし、地方の特殊な生産者はアンパンマンに助けられただけであり、話の広がりとしてどこか物足りない。循環型経済は、システムの中にうまく組み入れて、廃棄されたり消えたりせず、そのサービスを行き渡らせることを目的とする。したがって、やはりバイキンマンは永遠に必要ない。