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紅白失敗は真田丸成功を履き違えたから

 NHK紅白歌合戦叩きが止まらない。

 

 裏側のガキ使を見つつ紅白を時々見る程度だったが、確かにタモリとマツコといい、シンゴジラといいグダグダ感が酷かった。

 

 その原因について、SMAPの辞退で準備不足に陥ったとか司会が慣れていない等の記事を読んだが、本ブログで再三指摘している話が載っていないのでここに書くことにした。

 

 それは「真田丸」好調による奢りである。

 

 終盤の大坂の陣での展開は特に、史実を無視したオンパレードで、又兵衛や勝永ら五将が散らばって配置されず真田丸に一緒に篭ったり、敗戦原因が城内の一料理人の私怨だったり、大坂の市街戦のはずが家一つない野原での戦いになっていたりと、挙げればきりがないほど演出に満ちていた。

 

 史実の合戦の面白さ、史実の真田幸村という素材の面白さを生かさず、脚本家の三谷幸喜をはじめNHKはこれでもかというぐらい演出をてんこ盛りに盛り込み、コメント欄も「黙れこわっぱがまた聞けた」だの「佐助のフラレっぷり」だの演出面の話で溢れた。

 

 当然、NHKはこの流れで紅白歌合戦を企画した。伊集院光が「今までのNKKはここまではやらないでしょという局員の声が嫌い」とぶちまけていたが、真田丸成功の要因をNHK本体の企画の成功と履き違えたことが、年末最後の大事な番組で大失敗につながったのだ。

 

 では真田丸成功の真因は何か? 再度振り返ると、はっきり言って序盤は勢いがなかった。信州の田舎の小競り合いを視聴するのは一部の大河好きや歴史好きに限られていた。変化が起きたのは中盤の秀吉登場からである。

 

 小日向文世が演じる豊臣秀吉は、話し方こそ小日向っぽい低音だったが、背の低いビジュアル、軽快な動きと豪快な笑い、怒った時の恐怖感等、まさしく現代人が飢え乾いていた天下人の要素を十分に持っていた。安倍総理の謙虚さとは対照的なぐらいだ。

 

 この秀吉役の怪演に普遍性があったために多くの人の心を掴み、視聴率は上がった。ずっと見ていたいという声もあったほどだ。

 

 それは小日向文世という俳優が端役からボス役まで様々な役を演じてきた集大成が、同じく草履取りから天下人となった秀吉の多様性に合致したとも言える。

 

 我々は秀吉という素材が持つ味を十分に堪能することができた。

 

 同じことを真田丸終盤の2大合戦にも見たかった。第二次上田合戦では、真田昌幸が徳川勢を散々翻弄した挙げ句、秀忠のスパイを捕まえて「城内をくまなくみたようじゃが本当の仕掛けはここじゃ」と自分を差す史実。大坂の陣では、真田幸村が7人の影武者を左右に放って徳川勢を散らし、自身がまっすぐ本陣に突っ込む戦法。

 

 どれも無かった。無駄な演出に満ち、歴史好きからは物足りないのオンパレード。

 

 NHKは序盤と中盤の視聴率の差で、信州上田の史実よりも大坂城内の演出と勘違いしたのだろう。

 

 いや、史実秀吉の魅力の伝え方が成功したのだ。今年の大河(女城主直虎)は、史実直虎部分が資料に1,2行程度と圧倒的に少ないらしく、ほとんど演出という割合になる。

 

 どうも見る気が起きない。