20世紀前半にアメリカで台頭した「シカゴ学派」は、ヒューム哲学に基づいた経済システムを唱えた。ヒュームは、人間の脳のシステムが、「因果(原因と結果)」「近接」「類似」の3つで体系づけられていることを発見し、自由競争こそがその改善を繰り返すと考えた。そしてシカゴ学派は「規制撤廃(小さな政府)」を柱とした新自由主義経済を唱え、80年代にはソビエトを破り、90年代には欧米や日本以外の国々にも広がった。
竹中平蔵もシカゴ大学に行った1人で、人間哲学と社会科学の結びつきが貧弱な日本では魅了される学者が多く、竹中も帰国して小泉内閣で新自由主義を推し進めた。しかし今では、テレビ番組で「トリクルダウンなんて、ないない」と返した発言でこの主義寄りではないことが判明して話題になっている。トリクルダウンとは、自由競争で貧富の格差が広がっても、富が雫のように下へ垂れてくるという考え方だ。
そこで、ヒューム哲学をもう一度振り返ると、因果の反対の「意外」、近接の反対の「遠隔」、類似の反対の「相違」という3つの概念が浮かび上がる。これをもとに人間哲学を組み立て直し、経済システムをより人間に合ったものへ、という道筋が出来てくる。その結果が循環型経済なのだが、どうも私の書き方がわかりにくいのか、賛同者はいない。後輩の哲学講師すら返答がなかった。