いくら義時が主役だからってそれはないだろう!と思った今回。
源義経の描き方だ。
奥州から弁慶や佐藤兄弟などの家来とともに真っ直ぐ鎌倉に向かったと思いきや、「富士の山に登ろうぞ!」と寄り道する。
しかもその際、卑怯なやり方で猟師らしき男を至近距離で射抜く。
なんという勝手、なんという横暴。
対照的に兄の頼朝は徐々に人望を高める演出で3万の軍勢に膨れ上がった。
確かにカリスマ性があるからこそ転換期の最終勝利者になったと思うが、義経とて天才的戦術家としてキーマンとなった男だ。粗略に扱っていい訳ない。
現代でこそ“戦に強かっただけの男”やら“政治に疎い若僧”、“容姿も美男子ではなかった”等、散々な言われようだが、少し前までは美形の模範的武将という位置付けだった。
しかも決して庶民的人気だけではない。
戦国時代でも、戦国大名の代表的存在だった武田信玄がリスペクトしていた証拠もある。
この本が主に引用する「甲陽軍鑑」は信玄の側近である高坂弾正が著し、その信憑性の高さはNHK(確かヒストリア)も保証済みである。
つまり勉強家の信玄は、源義経の戦術記録だけでなく、あまり着目されない和歌までも参考にして、自身の考え方に活かしている。
「かけひきに 独りばかりをたのみなば ただ闇の夜の つぶてなるべし」
おそらく、兄範頼とともに率いた平家追討の大軍も、今回のドラマのように寄せ集めで各将がいがみあっていただろう。その統率の難しさに義経はこんな和歌を読みつつも、なんとか進軍して各地を転戦し、そして勝利した。
有名な一ノ谷や壇ノ浦だけではなく、水島(岡山)や屋島(四国)、あと義仲と戦った宇治もある。詳しくはこんな漫画で知った。
※設定には賛否あり
義経だけの話で15年、合計51巻(上22下29)にもなることに驚く。それだけ資料も多いようで、途中ネットで確認しながら読むと作者の思い入れの強さに感心する。
信玄にリスペクトされるだけの男であることは間違いない。
と、文句たれながら今後も大河を見続ける。