今回も「おもしろい」「わかりやすい」と好評な大河。
初回に続いて平氏政権の“終わりの始まり”を描いており、源行家や文覚上人の訪問、源頼政と以仁王(もちひとおう)の乱など一通り押さえつつ、徐々に源頼朝がいつ立ち上がるのか、その挙兵に視聴者の関心を引き寄せている。
筆者なりに気になったところを4点あげる。
1. 政子は文字が読めないのか?
以仁王の令旨(りょうじ)を北条一族で回し読みする最後に受け取ったものの、即座に「読めません」と頼朝に返す政子。
当時の女性は無学なんだと印象付けさせるが、実は文字も読めるし読書家ではないかと思われる話がある。あの徳川家康が座右の書とした帝王学「貞観政要(じょうがんせいよう)」を政子も愛読しており、だから2人とも長期政権を創業できたと。
北条氏の生まれなら社交上お経の読経もできるはず?なので、即座に読めませんと突き返す演出には違和感を覚えた。
2. 露骨に暴力を振るう描写について
前回は北条義時を数人で地面に無理やり這わせて足で顔を踏みつけて泥水を吸わせる場面、今回は北条時政の顔に献上品の野菜を押し付けたり野菜を蹴り回す場面。
いかに当時の平家が横暴で尊大だったかを印象付けさせる演出であり、現代人の多くが驚いたことだろう。
しかし、現代でも防犯カメラがない部屋や盗聴機を使われない場合、社会的に低層の人々の間では似たような横暴は決して無いことはない。実際に関東でも関西でも目にしている。
まして平安末期の武士の間なら尚更もっと酷い侮辱はたくさんあったはずである。むしろ大河の中で少ないと思うし、その延長線上に後々描かれる「鎌倉殿の死後の13人」による凄惨なバトルロワイヤルが勃発する。
3. 時政が献上した野菜は適当だったか?
これも当時の坂東がいかに素朴だったかを印象付けさせる選択だったが、「徒然草」の中(※)にも鎌倉時代の質素な暮らしぶりを描いた話があるので、特に違和感はない。
ただ平家への献上品としては義時が指摘した通り裏目に出た。清盛が神戸を開港して始めた日宋貿易で目が肥えている相手には決して有り難がられはしない。
※北条時頼の時代の話
4. 夢は歴史を動かすか?
頼朝が京都に放っているスパイからの情報によると、以仁王の令旨を受け取った者は全員、討伐の対象になるとあり、驚いた頼朝と北条は決起を検討するようになる。
ここで長澤まさみのナレーションが入り、実はこの情報はスパイの早とちりだったと後世では判明するが、「時として慌て者の早とちりが歴史を動かすことがある」と。
似たような話では、数年後の富士川の合戦で水鳥の群れが一斉に羽ばたいた音を源氏の大軍と勘違いした平家軍が京都まで逃げ帰ったりした。
あと、頼朝の夢に後白河法王が現れて揺らす場面が視聴者に「三谷脚本の金縛りだ」と好評だったが、夢も歴史を動かすことがある。有名なものでは、後醍醐天皇が楠木正成を抜擢することになる夢や、北条早雲が長らく関東に居座っていた両上杉を倒すことになる夢がある。(検索するとすぐに出てくる)
ただ、頼朝の場合は夢のお告げというより、平家打倒の思いを抑圧し続けた結果、深層意識下にそれが沈み、ある時は夢となったり、またある時は偶然の一致な出来事が起きたりして、ついに立ち上がることになるのだろう。(前回記事参照)