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(格差問題) 新自由主義の呆れた屁理屈を解説w

 2030年の達成を目指すSDGsに世界が舵を切った今、1980年代から猛威を振る(い90年代には早くも馬脚を現した)った新自由主義に耳を傾ける人は今さらいないはずだが、それでも日本の中枢はこの考え方に“まだ”占められているため格差問題も一向に解決に向かわない。(※岸田首相のカラクリを最後に明かす)

 

 ハイエク(※1)の高弟でこの主義を日本にもたらした故西山千明立教大学教授の著書「第4の選択」(1982年)で解説する。

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 前巻192頁にて、西山は老子孔子批判「私心をなくしようとするのは、つまり私心だよ」を紹介する(赤い線の部分)。孔子といえば2024年に1万円札になる「日本資本主義の父」渋澤栄一の道徳経済合一説(著書は「論語と算盤」)だが、これと真っ向から対立する意見と言える。

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 続く193頁には、「世の人々が大きく間違っているのは」と大上段に構えて、善意に基づいた諸制度や諸政策こそ実は悪くなる原因(青い線)と説く??? 信じられないことを言うものだ!

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 そして緑の線のように重税やバカ高い保険料を肯定する。今も税率が高くなる一方だが、そもそもそうならないよう知恵を絞ったのがハイエクを論破したケインズなのだが、対共産主義で多忙な80年代の英米政府に擦り寄ったハイエクたちが、ケインズも計画主義という点ではマルクスと同じとまとめて退けようとした。

 しかし、少し考えれば分かることだが、老子が説く孔子批判や無為自然は後世の市場経済とはまったく関係がない形而上的な道(タオ)である。

 なのに西山は老子という諸子百家の中では実在も怪しい大家を使って、橙線の箇所から194頁にかけて郵政民営化にまでつなげる。

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 後に小泉純一郎が何とかの一つ覚えのように郵政民営化を連呼し、マスコミ総動員で洗脳された国民により選挙大勝後に実現したが、その後に何が良くなったのか? 局員の雰囲気は民営化後もそう変わってない。悪名高い竹中平蔵により莫大な郵便貯金外資に渡ったと言われているが、この本のようにかなり前から狙われていたのである。

 

 さて、儒家や渋澤は「私心をなくせ」と説いても、老子の「それこそ私心だ」を持ってきて、形而上的な道(タオ)には向かわず、英米哲学の「自愛心の原理」につなげ、そこから菅前総理も大好きな「自助」に変わり、共助や国民への公助を後回しにする「市場経済」「規制撤廃」「民営化」「福祉切り捨て」「弱肉強食」に導くのが本書である。

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 さらに、西洋的な自由主義よりも東洋の方が内なる心に即している(天放)とまで言う。ここまで来ると、日本の企業がいつまでも賃金を低い水準に押さえ続ける謎も見えてこよう。払いたくないという私心、もっとガメたいという私心にソッチョクなのだ。

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 これを岸田総理は批判して、企業に対して「もっと中間層に分配を」と求め、それに応じない企業を悪者にしようとしているが、国自体も世界一高い議員報酬に手をつけないし、議員定数削減やバカ高い保険料や税金の見直しもせず、納税者のフトコロを痛め続けているので「国も私心にソッチョク」という意味では同罪、いや他人に罪を被せようとしているだけ重罪と言える。

 

 世界の潮流たるSDGSの「17の目標」(※2)など私心をなくして意識しないと出来ないのだから、新自由主義者は全員改心するか、できないなら退場するべきである。そして私心を押し殺してゴミを分別して捨てる一般生活者の中から、立派な人物を押し上げて善政を敷き直すしかない!

 

 最後に渋澤栄一の言葉で締めくくる。

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※1 ハイエクを紹介したサイトの中では、少し古いが松岡正剛さんの論が結構語り尽くしている。

 

※2 17の目標は、私利私欲だけの新自由主義と違い、道徳的な目標が非常に広く多岐に渡っている。