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(晴天) 現代の停滞と渋沢

 渋沢栄一の前半生を振り返ると、横浜焼き討ちテロ計画に参加するほどの反幕府だったはずが、一橋慶喜直属の幕府側に立って勘定方を務め、パリから帰国すると幕府を倒した薩長の下で働くという、悪く言えば変節漢そのものである。

 

 だからこそ生き延びた。宗旨替えしない者は水戸天狗党渋沢成一郎(喜作)のように舞台から降りてゆく。では栄一は生き残るために変節したかというと、それも違う。

 

 彼は初めから社会はどうあるべきかという視点を持ち続けていたから、一時的にどこかに所属しても、その所属先に身も心も浸かってはいない。逆にその視点がない者は所属先に殉じてしまう。

 

 世間は町田啓太演じる土方歳三の格好良さばかり話題にしているが、この大河のキモであるパリ行きにもっと着目すべきであり、考察を深めるべきである。そんな僅かな視聴者の1人である筆者が自分なりに感じ、高めた思考がある。

 

 まず栄一は、パリ御一行の中で予算を司る担当にいて、本国で幕府が危機にある中、送金も期待できない状況にあった。なんとか各所に掛け合って融通する栄一。

 

 そんな時、フランス人の銀行家から一滴一滴の雫が川となるように資金を集める話を聞いて、これだと目を輝かせる。

 

 後に「日本資本主義の父」と呼ばれる栄一だが、彼自身は資本主義という言葉を一度も使わず、“合本主義”と呼んでいたらしい。詳しくはこちら↓

 


「合本主義」研究プロジェクトについて(1)|研究センターだより|研究センター|公益財団法人 渋沢栄一記念財団

 

 では何故、日本にそれがなく、西洋に先にあったのか? ここで思い出したのが、教会のミサの中で行われるある光景である。

 

 皆が聖歌を歌いながら、小さな編みカゴのようなものの中に信者が小銭を入れ、隣の人へ、そして後ろの列へと渡して小銭を集めていく。集まったカネはもちろん神父のフトコロではなく、アフリカなど外国の貧しい村々への支援として送金される。

 

 ・・・と、これは30年以上前の記憶だが、今やアフリカもスマホが普及したり高層ビルが建ち並んだりして富裕層も増えている。日本では30年間ずっとパートの時給が千円を上回ることがないように賃金カット一辺倒で多くの国民が青息吐息になっており、やがてアフリカの金持ちに日本の貧民がおカネを恵んでもらう日も近いかもしれない。ひろゆき氏が安い国なった日本はアフリカ並みになると断言した今日の記事を読んで、いやいやもっとだろうと感じたのだが。

 

 検索して特にキリスト教のその部分と株式との関係に触れた考察は見当たらなかったが、栄一に話したフランス人は「ソシャルキャピタル(社会資本)」のために資金を集めると言い、帰国した栄一も、電気ガス水道、鉄道など主にインフラ面でたくさんの会社を立ち上げ、人を集め、経済を回した。

 

 つまり、キリスト教は貧民支援のためにカネを集め、経済は社会資本のためにカネを集める。私利私欲、アニマルスピリッツ、等の考えもあるが、栄一はどちらかというと経済と道徳を近いように考えていた。

 

 ›公益につながるものに、金を融通し新しいものを創造する、すなわち「無形の金」から「有形の富み」を創り、それがうまく機能するように資金を援助する。これが銀行の役目であり、合本組織の代表的存在でした。

 

 現在、やるべきことはネットや本などで分かる通り既にほぼ固まっている。議員が多いから削減、税金がバカ高いから減税、リサイクル問題、食料自給率少子化対策・・。

 

 これらがなぜ解決しないかというと、解決するための人が(才能が)集まらない、カネが集まらない、要は解決しようとしないから解決しない。

 

 改めて“合本主義”なる新語で人やカネを集め、解決に向けて皆で協力し合えば、やっと変わっていくと思う。