草分け中

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(青天を衝け) 学と金と人のバランス

  今回は結構面白かった。

 

  まず冒頭で、武田耕雲斎と藤田小四郎が率いる水戸天狗党が北陸で壊滅し、尊皇攘夷運動が一つの区切りを迎える。

 

  後半で栄一は天狗党の失敗を理念だけで資金が乏しかった点を指摘し、後の経済家としての顔が芽生えてきたところを見せる。

 

  現代に例えればヤフコメ民は「いいね」の数を増やそうとそれがもらえそうな屁理屈を書き込むが、実際の行動に物理的にも経済的にも結びつけないため理念の表明だけで終わっている。

 

  栄一は理念だけで終わらない一段上の"ある機能"を搭載した若者だった。江戸の裏角で武器を買い集めているところを見て平岡円四郎は声を掛け、少し話しただけでテロリストで終わらせるにはもったいないと見抜いた。そして強引に一橋家に引き込んだ。

 

  すると円四郎の慧眼通り、いやそれ以上の事を特に円四郎亡き後に立ち回るようになった。備中一橋領(岡山県南西部の井原市の辺り)での兵集めは、関東の兵集めで覚えたスキルを使い、それだけでは不十分と見るやあの手この手で頭や腕を使った。

 

  領内の塾に参加して論じ合い、笠岡の海で一緒に漁をしたり、剣術試合で自分を認めさせたり(そういえば日本の力士が黒船で一番の海兵と相撲をして投げ飛ばしたことで腹を立てたペリーが渋々認めていく話を思い出した)、酒席で胸襟を開いたりと。

 

  ハローワークやフロムエーなどの掲載を見ると相も変わらず安い金額と在り来たりの釣り文句しかなく、各企業の中高年の担当者が古い石頭で募集業務を独占していることが丸分かりだが、いざ自分にさせてもらうと、打つ地域を細かく分析して効果的に変更したり、金額アップを上司に認めさせたり、他社にはない新鮮なコピーを広告担当と腹を割って話したりして(東大祭りで「牛には酷だが串に刺す」とある屋台を参考にした)、あっという間に前年同時期より10倍以上も集めることに成功したことがある。

 

  ただ猛烈な嫉妬を受けることになる。栄一はその点、次に一橋家の懐を富ませる担当者につくことで回避した。財政が潤えば先輩上司たちの懐も潤うからで、ドラマには腐った代官への憤りしか描かれていなかったが、当然賄賂を握らせたりもあり、備中の代官もゲスだから脅しよりもカネで動いたと思う。

 

  最後に高評な草剪剛演じる一橋慶喜について。今回は実父斉昭も百姓を大事にして領内の産業を活性化させたとの発言があったが、こうした学問と武道、経済、政治をバランスよく斉昭から慶喜が引き継いで、元百姓で今は武士、後に経済家となる栄一が重用されるようになった。これもドラマには出てこないが、その更なる祖先に水戸黄門(徳川光國)がいる。大日本史を編纂した学、庶民にも愛された勧善懲悪な感覚、そして今でも水戸で食べれるが日本で最初にラーメンを食べた(黄門ラーメン)食通、経済家でもある。

 

  現代はまだどこもかしこも学はよく言えば専門家育成、悪く言えばタコ壺の専門バカ、経済は利益優先で製造業や農業を海外に頼って産業空洞化を招き、政治は二代目三代目の培養されたボンボンが占めている。

 

  ・・・と、今の私も理念だけで終わっている。