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(麒麟) 所詮は破壊者止まりだった信長

  今回も面白かった。

 

  私なりに気に入ったポイントを幾つか挙げると、

 

・架空の町医者、東庵が旧友の“曲直瀬”と発言した医者は実在の名医だが、その名は道三。フルネームで曲直瀬道三とすると、その後の帰蝶とのシーンで斎藤道三が出るのでややこしくなるから姓のみとしたか。

 

・光秀と帰蝶の再会に茶をたてるところまで同席した今井宗久は当時確かに京都にいて、本能寺の変が起きるとすぐに堺の家康に知らせた。この素早さは事前に勘づいていたからと思われ、ドラマでは今回の茶会で信長殺害計画を察したか聞き耳を立てたか。

 

・光秀が丹波と近江をうまく治めていたことは事実。その秘訣を尋ねた家康に光秀は“見込みある人物”と期待したと思われる。前々回のブログ記事の通り、数十年後に南光坊天海になった光秀が江戸城に現れ、家康と初対面なのに長時間2人きりで話し込んだ記録を思い出した。その後、江戸の都市計画が天海を中心に進められる。

 

・光秀の台詞の中に出てきた「戦は他国の領土を奪うところから始まる」「平和な世をつくるためにまずは自国を潤わせないといけない」箇所は現代の中国を思い出した。尖閣海域への侵入回数も増えてきている。先日ダボス会議にリモートで参加した習近平は一連の戦狼外交で各国から嫌われて内向き経済に方針変更していたがどうやらそれが失敗したため、また世界市場に戻りたいと哀願してきた。

 

安土城での饗応役を光秀が務めたことが家康発との演出は初耳だが、毒を盛られる警戒心からという理屈には納得したとともに、それを信長が気にくわなくなる展開も面白かった。別の記録では魚が腐ってると難癖をつけて全て堀へ捨てたために異臭が広がったとあった。

 

・そもそも仕来たり通り失礼のないよう一の膳の品数を指示した光秀に対して、信長は二の膳も全て出して豪華に?見せようとした。料理に関しても別に逸話があり、京都で一番の名料理人が三好戦の後に捕らえられて信長から舌を満足させたら殺さないと言われて膳を出したところ、「不味い!」と激怒され、危うく首をはねられそうになった。もう一膳と懇願して今度は尾張人の舌に合うよう京風の薄味から田舎風の濃い味にすると助かったという。

 

・上記の通り信長は決して高尚な人物ではなく、合戦に強く優しさも面白さもあるにはあるが、後世の評論家が言う通り現代にも通じる合理的精神の持ち主だから市場経済や技術革新を進めたとするのはねじ曲げ過ぎである。

 

・人物的にはむしろ低級で、室町時代までの悪しき慣習や通例を破壊したところまでは良かったが、更に帝に譲位を迫るなど壊してはならないところまで破壊しようとした。これでは“スクラップ&ビルド”のビルドのない破壊者である。

 

・歴史は繰り返す循環史観的に見れば、同様の破壊者タイプには平清盛新田義貞がいる。清盛も皇室の伝統まで壊して幼少の安徳天皇に譲位させた。平家も義貞も短命で終わった。

 

・信長も短命でなければならぬ。破壊が落ち着いてビルドは誰か別の者が担うべき。そう思った光秀は自ら“闇に光る樹”に斧を入れる役を引き受けたのか?  このドラマで今までの価値観が一転した人が多いようにネットの書き込みからも分かる。信長をただ格好いいと憧れた昭和の見方が改められて善悪両面を見るようなった。

 

・光秀のような本来穏やかな人物が今回ラストのシーンのように顔を歪ませ怒る場合、たいてい怒らせる側に問題がある。日本のブラック企業の社長や幹部も同様で、失われた30年の間に多くの温厚な人物や技術者がいなくなった。低賃金の外国に生産拠点を移したために今では世界のパソコン売り場の店頭に中国や韓国の製品ばかり並んで日本製は消えてしまった。

 

・日本がブラック化して判断を誤る前に明智光秀のような人が本能寺の変を起こせばと悔やまれてならない。残念ながら光秀はずっと逆臣とされて、自浄作用は起きなかったため、全国に失業者や引きこもりが中高年も含めて増えた。社員の生活を思えば産業空洞化という愚かな判断は行わなかったはず。

 

・次回、長谷川光秀の好演次第では、影響を受けた一部の人により政治的にも経済的にも良い変化が起きると期待したい。

 

※今日の記事で、麒麟ではなく子鹿を連れて

きた4歳児の写真。“子供には不思議な力がある?”

 

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  以上。