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制御不能に陥った国はどうすれば良いのか?

 新型コロナ問題を巡る安倍政権の拙さと吉村大阪府知事のスマートさについて、多くの人がいろいろな角度から論じている。「府にできて何故国にできないのか?」「国の首相に吉村さんがなればいい」「もう安倍は要らない」等。

 個人の資質の問題も確かに大きいが、このブログの骨子であるサイバネティックスのモデルを使って比較検討してみたい。

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「カラー生物百科」平凡社(第4版)より

 上図を少し解説すると、コンピューターの創始者として知られるノーバート・ウィーナーが考案したモデルで、専門分化する結果論の科学とは逆に、様々な分野を総合する目的論の科学に属する。

 一番左端の「操縦の原理」は科学者の観察や自販機からジュースを取り出す、中央統制経済など。次の「制御回路」は空調や調速機、ホメオスタシス等が分かりやすい。そして「学習回路」は何度もトライしてプログラムを修正する初期資本主義経済、右端の「思考回路」はプログラムの修正を繰り返す経済循環などとされる。

 政治については制御できてないことが常で、例えば昔は省庁が増える一方で、役人も増え、予算を圧迫していった。これを大きく改めたのが橋本総理の省庁再編で、まあこのブログも真価が理解できる読者が非常に少ないので踏み込んで書いてみるが、要はモデル上の実現値が「国家秩序、富、文化上の真理、福祉」(というのが橋本4本柱)であればよく、その4つを実現するために当時の雑多な省庁を再編した。こうして厚生省+労働省厚生労働省や、文部省+科学技術庁文部科学省建設省国土地理院なども国土交通省の中に組み込まれた。長年最大の権力を持っていてやがてノーパンしゃぶしゃぶで権威が失墜した大蔵省は橋本総理の強権で財務省に改名された。

 こうして1府12省庁にすっきりとした再編は21世紀とともにスタートし、今に至っている。この大きな出来事に嫉妬したのが後続の自民党政治家たちだが、なかなかそれを超える事業が出来ないのは、新しい思想哲学を含めることが出来ないからである。安倍総理念願の改憲も同じで、ただ軍を動かしたいだけという単純さだけでは憲法を変えることはできない。

 

 さて、新型コロナ問題については、モデル図の下の環境から上に伸びる外乱に対して、対応できるプログラムがないことが先ず挙げられる。つまり省庁再編で強大化した1府12省庁の最初の1府である総理直轄の内閣府は、モデル図の上から2番目の装置に当たるが、一番上のプログラムから知的な指示を得て制御しようにも適切な対応ができない。

 次に、最近ではネットによる率直な国民の反響というフィードバックがある。これを軽視したがために、小型サイズの布マスクを揶揄(やゆ)されたり、補助金のない自粛とはおかしい、昭恵夫人が花見や旅行とはおかしい、等の悪い回路となっていった。

 安倍政権のプログラム的問題とフィードバック的問題をうまく解決できているのが大阪の吉村府知事で、橋下徹氏も述べていたが専門家の用い方が非常に上手で、先ずは「週末は大阪と兵庫間の越境を控えてほしい」と発表した時に兵庫県の井戸知事は「何を大げさな」と反論して叩かれた。

 モデル図で言えば③学習回路や④思考回路のようにプログラムの修正を行いながら取り組んでいるため、古い人たちにはできなかったこともたくさん行い、しかも国民からの反響も良い。最近では数値化した出口戦略や医療従事者への給付、これからもまだたくさん出るだろう。

 つまり前代未聞の問題に対して既存のプログラムの修正をしながら適切な対処を行おうとしているから国民からの評価が高い吉村知事に対して、安倍政権は既存のプログラム修正がなかなか出来ないので拙い対応となりフィードバックも拙くなる。

 省庁再編で総理直轄の内閣府の権限が強くなったために、地方の行政府の首長と比較しやすくなり、両者の差がますます目立ってきた。昔だったら厚生省が悪い、厚生大臣を替えろで済んだかもしれないが。

 最後に国にプログラム修正はどこまで期待できるかだが、本気でやるとしたらオンライン教育やテレワーク、観光立国の見直しなど広範囲になるのは間違いなく、現政権には出来ないし、やってもガタガタになる。新しい人と考え方で行うしかない。