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天地開闢の前に何があったのか?(無面目より)

 再び諸星大二郎の作品について。

 

 一般に科学ではビッグバンによって宇宙が始まったと説くが、ビッグバンの前がどうだったかは説かないし考えてもいない。

 

 非科学的と言われる東洋思想でも、最初に太極が生まれ、次に陰陽に分かれたと説き、太極より前は分かっていない。

 

 世界中の神話では最初に神が生まれ、次に宇宙ができたと説く。ではこの神はどこから生まれたのか?

 

 こういった疑問を持つ人は私を含め時々いるが、話し合う相手を見つけられないまま歳をとる。そんな中、鬼才・諸星大二郎はこの疑問を1988年に著した作品「無面目」で回答している。

 

 まず無面目についてだが、南極老人が東方朔に説明するシーンによると、天窮山の岩の上で深い瞑想にふけっている、天地開闢の前から思索を続けている神で、本来の名前は混沌という。すると、それに朔がかみついた。天地開闢の前からいるなんてあり得ないと。

 

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 この朔の疑問には南極老人も理解を示す。「そういうことになるな。だいたい始原の頃の神はわしら神仙の目からも隠れて普通姿を見ることはできん」「だが無面目は別じゃ。しかも天地の始まりの時から存在しているから、宇宙の秘密、天地のしくみについて知らぬことはないという・・・」

 そう聞いた朔は嬉しそうに「そんな神なら一度会ってみたいですな」と応じた。「だいたい私は宇宙の始まりについて常日頃疑問をもっていたのです」

 

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 こうして物語はスタートする。ただ今回はこの作品の紹介は行わない。気になった方はレビューを参照して購入してほしい。

 

 2人は天窮山の混沌に会う。

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 そして、のっぺらぼうでは質問し答を聞けないので、顔を描くことにする。

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 朔は混沌に質問し、古代の女媧が天地を治した時の五色の石がどんなものか質問すると、それは木火土金水の五行のことだと混沌は明解に答える。「なるほどのう」と南極老人が納得する一方、朔はどうやってそれらのことが顔がなくて分かるのかと聞くと、「目で見ずとも天地のことは五行の動きを通じてわかる。へたに目で見ようとする者こそ、物事の真実を見誤るのだ」と返す。さらに朔は、「あなたは太極から天地が生じた時からおられたといいますが、それは本当ですか?」と質問する。それに対して、

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 ここに出てきた「太極が内蔵する純粋な智」とは何か?

 

 以前から述べてきた通り、これこそ物質宇宙が生まれる前からある、波動だろう。先に波動上の混沌があって、智的に進行し、やがて各定数のバランスが生まれ、定数に基づいて物質宇宙ができていった。

 

 とどのつまり、私は諸星作品の影響を知らずに受けていたのである。