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荘子とパース

 アメリカの哲学といえばプラグマティズムが先ず挙げられる。プラグマティズムの創始者は19世紀のパース。彼は、真理は道具のように有用でなければならないと説いた。以後、アメリカは対立するソ連や東欧、中国などのマルクス主義哲学、唯物史観ヘーゲルの観念論などに対し攻撃する武器の一つとした。

 ところで、プラグマティズムと同じことを言っていた論者が古代中国の諸子百家の中にいる。老荘思想で有名な荘子の書の中に出てくるライバル、恵子だ。彼は有用な木の喩えを用い、何の役にも立たない大木もあると暗に荘子を非難した。すると彼は、そんな大木でも幹を登って上で休むことができると反論した。現代でいうところの各会社の事務所に設置義務がある休憩場所というところだろう。

 役に立たない木はなく、木は部位によって適材適所するべきであると同じことを説いたのは、甲陽軍鑑武田信玄五輪書宮本武蔵玄信である。

 そう考えると、プラグマティズムが考えている有用というのは、かなり限定されたものであることがわかる。数学や科学、技術を有用とする人は、盆栽や絵画の有用性を深くは見まい。ただ、荘子はもっと大きな視野で見ていると思う。