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なぜ日本が衰退し続けるのか?を昨夜の鶴瓶で考える

 バブル崩壊以来、「失われた10年」が20年になり、30年になろうとしている。様々な問題が解決しないまま、今日のニュースでは新型コロナウィルスの対応でも1日の検査数が韓国より2桁も少ない事実が指摘され、ネットでは「もはや主体性を失った後進国になった」と言われる始末だ。

 

 なぜ日本は衰退し続けるのか? なぜ政治も経済も少子化も解決しないのか? 誰も分からないので衰退が続く訳だが、実は答は1つしかない。それを言っても誰も分からないか、いや100人中100人が実は分かっていることなのか・・。

 

 答とは、正解を行わないからである。正解を行わないから解決しないだけである。では何故そうなるのか? それは日本人の誰もが絶対にこの正解を行いたくないからである。ちょっと禅問答っぽくなったので昨夜のドラマを引き合いに出そう。

 

 テレビ東京で放送されたのは吉田茂白洲次郎を主人公にして戦後の日本が見事に独立を果たした内容。放送前からネットでは、吉田茂役を笑福亭鶴瓶が演じることを心配する声が多かった。鶴瓶といえば、落語界の大御所だし演技力も決して悪くはないのだが、どうしても大河ドラマ「せごどん」で演じた岩倉具視役が思い出され、以来「何を演っても鶴瓶になる」と言われるようになった。「昔の森繁久彌が演じた吉田茂は本当に良かった」という書き込みにも賛同が多い。

 

 では何故、日本でも上位の頭脳を持つはずの東京の制作スタッフが集まって、岩倉具視吉田茂笑福亭鶴瓶に演じさせる結論に至ってしまうのだろうか? そこに考えるべき鍵がある。

 

 真面目な顔つきで、深い眼差しが持ち主の俳優には、絶対に演じさせる訳にはいかないのである。そう、絶対に。実際、当人には更に加えてカリスマ性や常人とは違うオーラもあるだろう。これらが何もない、不真面目な顔つきで細いタレ目の鶴瓶だからこそ演じさせたのである。例えそれで視聴率が良くなくても制作陣に異論はない。

 

 例えば吉田学校の面々を集めた酒の席で、鶴瓶演じる吉田茂が「おい、GHQは何の略や?」(東京弁のはずだが筆者の耳にはそう聞こえた)と尋ね、「Go

 Home Quickly(早くアメリカに帰れ)の略や」と答える場面には鶴瓶はよく似合う。視聴者の中にもきっと笑う者はいるだろう。

 

 この和み感を与えるためには鶴瓶が確かに芸能界の中でも適役なのだが、岩倉具視吉田茂という、日本が浮くか沈むかという最重要な時には決して和みは必要ではなく、真剣で真面目な人物しか適さない。

 

 なのに現代日本人の多くは、この種類の真面目さを激しく嫌う。徹底して嫌い、遠ざけ、孤立させ、あるいは潰し、見ないようにする。もしそんな人物が近くにいると、絶対に我々の情実縁故や不正、隠れた不法行為を指摘するだろうし許さないし、何もしなくともこちらが恥ずかしくなって息苦しくなる。

 

 だから今回、どんな事情があったか知らないが、おそらく麻生家が無駄に多く出て来て太郎少年も登場したのでその方面から指示かカネがあったように推測され、吉田茂が主役のドラマを作ることになっても、配役については絶対に鶴瓶のような人を持ってくる。

 

 しかし、こんなことを続けている限り、つまり今後も歴史上の偉人を鶴瓶が演じる限り、日本は決して良くはならない。薩摩の下級武士に過ぎない利通や隆盛を明治天皇に近づけさせ、錦の御旗で幕府を朝敵にして戦意喪失させるなど陰謀を巡らせた岩倉具視がいなかったら明治維新はなかったし、得意な英語でGHQを言い負かした吉田茂がいなかったら日本の独立はなく、植民地支配が続いていたことは明らかだ。そんな人物は現代にもいつでもどこかにいるが、活用しないから良くならない。

 

 本当に長年の閉塞状況を打開したいなら、上記の趣旨を理解した上で、この根強い価値観をまず根本からひっくり返すこと、そして吉田が1年生議員の池田隼人をいきなり大蔵大臣に抜擢した(後に首相となって所得倍増計画を成功させた)ように、大胆な人事を行うこと、これしかない。