草分け中

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再始動いまだ成らず

   再びギアをかけようにもかからない状況の一例である。

 

元々日本の総人口の大部分は農民が占めていたが、戦後の急速な工業化とともに元農民の内陸部の子供たちが沿岸部の工業コンビナート一帯へ大移動し、鉄工業や自動車、家電産業などに従事した。読者の父親や叔父にも該当する者が多いだろう。

 

  こうして1980年代には世界有数の経済大国にのしあがったが、それとともに日本は後進の発展途上国らの羨望の的になってODAなど援助を求められたり、また先進アメリカの土地やビルを買っては恨まれたり軍事や国連などの舞台で用意も実力もないのに相応の役割を求められたりした。

 

  「ジャパン アズ ナンバーワン」を放棄して意図的に総量規制を行ってバブル崩壊を招き、実は資産が豊富なのに超借金大国を自称して日本は長期停滞期に入ることにした。決して衰退ではなく、グルメやアニメ、観光などの日本文化や技術の精緻さで世界の中でのプライドは保ちつつ、面倒な調停や世話役からは逃れることにしたのだ。

 

  ここで国内産業の一大転換も行われる。加工組立業は海外後進国でも容易にできるし、冷静に考えれば消費者の飽きのサイクルとともに国内に粗大ゴミが溢れる。なるべく環境を悪化させずに資金を回転させる産業として人財ビジネスやソフトなどのサービス業を育成することにした。工業に従事していた労働者は大量リストラして福祉や警備、派遣ビジネスなどに移していく。

 

  しかし、これらの新産業が目先の利益しか見ず賃金を低い水準に押さえ続けていたために、結婚できず少子高齢化が進んで人財ビジネスに限界が訪れ、今や求人をかけても入ってこない深刻な労働者不足に陥った。政府は海外労働者を入れると言うが欧米や中国などに流れて日本には入って来ない。

 

  人手不足による倒産、転職を繰り返した挙げ句に引きこもった50万人以上の中高年ニート、大企業に魅力がなくYouTuberに憧れる若者。高いコンビニを避け、より安い売買を求めてメルカリやアマゾン、ヤフオクなどが増えていく。

 

  肝心の政治については、美しい国を連呼するだけの第一次安倍政権の無策さに呆れていったん政権交代が行われても、鳩菅野田政権がそれ以上の無策だったためアベノミクスの第二次安倍政権が復権、これも帳簿改竄だった正体がバレ、ポスト安倍の後継者もなく、立ち往生している。

 

  さて、今後どうすべきかという話になると、今までとは違う視点と考え方で新しい人財を活用する他ないはずだが、この唯一無二のことすらまだ誰も気付かないままである。依然変わらず旧い視点と考え方で、旧い人財しか使わず、結果は悪くなるだけ。とことん悪くならなければ無理かもしれない。

 

  高い見識がありながら、絶対に誰も登用しないであろう人財や理論にもし目を向ける人が1人でも出てくれば、その時こそ新しい時代の本当の到来であり、期待してよいはずである。歴史にはそんな例が幾つもある。