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「いだてん」は面白すぎるが、良いものを良いと言わない昨今

  先ほど録画していた大河ドラマいだてんの最新回「トップオブザワールド」を視た。前畑秀子の女子初のメダル(銀)獲得からスタート。え、これはこれでクライマックスに持ってくるべきでは?と、神回と絶賛された人見絹枝の話が頭をよぎる。

 

  すると、続いて次々と日本人選手のメダルラッシュ。圧巻は背泳ぎの金銀銅独占! 結局水泳6種目中5種目の金メダルを日本がとった。ロスオリンピックってこんなに凄かったのか、と驚くとともに、これテレビ見ない人はずっと知らないままなんだろうなと思う、というか哀れむ。

 

  さらに今回の山場はメダルとは全く別のところにあった。エキシビションでの日本泳法の披露、帰国の際の日系人たちの感謝の涙、いや、有色人種みんなが喜んでいた。白人絶対優位だった時代が徐々に崩れていく変化がここにも見られ、後の第二次世界大戦とアジアやアフリカ各国の独立につながっていく。

 

  面白いのになぜ視聴率が低いのかとよく言われるが、面白すぎるから視聴率が低いのだ。世間の各種データを調べながらほどほどに面白いドラマを作っていれば視聴者は魚がミミズを見た時のように釣り針に食いつく。しかしこのドラマは扱う素材が良すぎてまるで極上ケーキだから、釣糸を垂れても釣りにはならない。第二回東京五輪が間近だからと大河のテーマを安易に決めたものの、レジェンドの嘉納治五郎を軸に全てが現実離れしたことばかりが揃ってしまった。

 

  深層心理学的に人の出会いは無意識が関わっているらしく、読みたかった本を書店や古書店で見つけるのと同様、現代人が無意識的に見たかった話をドラマにすれば視聴率は上がる。YouTubeの視聴回数も上がる。

 

  だから視聴率が悪いのは作品のつくりが原因とは言い切れない。しかし経済の仕組み的には低視聴率は悪としなければならず、たとえ一部の視聴者が面白いと言ってもたいして取り上げない。もっと言い切ると、良いものを良いとは言わない。多く売れたら良い、売れなかったら悪い。

 

  ただし、その時は気付かずとも、時が変わると本当に良いものは評価される時が来る。今再評価されているのは日本の世界規模の素材技術やインフラだ。これも昨年秋からの日韓摩擦の拡大とともに、韓国の素材技術のあまりの低さやインフラの遅れがクローズアップされてから初めて多くの人々の知るところとなった。