経済学の常識では、売れ残りに価値はほとんどない。しかし、茶道の創始者、千利休の数ある面白い逸話の1つに、必ずしもこれにあてはまらない話がある。
自分の茶器をたくさん並べて、弟子たちに欲しい物を1つずつ取りなさいと言った利休。皆がそれぞれ手に取り、最後に赤い色の椀が1個残った。誰も取らなかったため、この椀の価値は低いはずだ。
しかし利休は、この赤い椀に「柿守」という名前を付けた。柿守とは、文字通り柿の木を見張る意味で、毎年秋に柿の実を収穫する際、来年もたくさん実が成りますようにとの願いを込めて、1個だけ枝に残す柿のことだ。この絶妙なネーミングに皆はあっと驚き、柿守と名付けられた赤い椀には高額の値がついたという。
さすが利休、と感心だけするのではなく、現代でもコンビニで売れ残った食品の再生策にも何か応用できそうだ。