小姓、井伊直政が初陣のとき寝所に忍び込んだ武田の忍者を斬った話はよく知られている。
脚色が多い今大河でその話自体が出るか出ないか気になっていたところ、確かに出るには出た。視聴者は直政の活躍に拍手喝采だろう。
しかし、伝わる話では近藤武介(ドラマでは武助)は忍者の頭領と言われ、あんなに若くはない。信康の部下として随行しているとはいえ、あんなに若ければ手柄1万石に違和感を覚える。
武田忍者の頭領自身が家康を暗殺しようと近づいたところ、小姓・直政が武士らしく警戒して武士らしく気づき、武士らしく主人を守った。そして捕縛した。このように描けば、井伊直政が武士として優秀なところが際立つはずだ。
しかしドラマでは、気配に気付くところまではあってもその時は仕留められず逃げられ、次に横になった際に偶然、薬箱の結び目の違いに気付き、名探偵ばりに推理し、罠をかけた。「薬担当の小姓(直政)が寝てしまって起きない。誰か薬を出せる者はおるか」と。
真犯人はそんな時みすみす現れるだろうか? 忍者ならなおさら姿を隠し出てこないだろう。まるで直政に現代の警察や探偵のような要素を含ませているようだが、むしろ時代劇らしくない。
ドラマの直政は今のところ好評だが、実際はもっと武士らしかったはずで、だからその後の各合戦での大活躍がある。その武士らしさ、武将らしさを抑え気味にしてよくあるヤンチャ坊主に描く意図は、主人公直虎をあくまでも引き立てるためだろう。
終盤で直虎を見習って直政が落ち着いていく筋立てならまだ良いが。