草分け中

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三太郎異聞

 昔々、ある村で悪い噂が広がった。

 

 悪い噂をまかれた「彼」は、その村にいたたまれなくなった。

 

 「彼」はいま祖父と祖母の3人で暮らしているが、実の母は自分が生まれる前に川で溺れてしまった。祖父は山へ柴刈りに行っていた。川で洗濯中の祖母はなんとか助けて家に連れ帰ったものの間に合わず、せめてお腹の子だけでもと、腹を切って「彼」を取り出した。

 

 しかし、「彼」が成長したとき傷つく噂を聞いてしまった。祖母が包丁で母を殺したと。「彼」はいたたまれなくなって、村を出ようとした。「どこへ行くのじゃ?」「おとうの所へ」

 

 祖母は吉備団子を作って見送った。途中、犬っぽい顔のはぐれ者や、猿っぽい顔の、キジっぽい顔のはぐれ者とめぐりあい、同行することになった。そうして都に着いた。都でもいろいろな噂はあれど、村と違って人が多いのでそんなに目立たない。

 

 やがて、都のカドに立て札が立った。「なんて書いてあるのじゃ?」「源頼光様が大江山に潜む鬼たちを成敗しに行くそうじゃ」「家来を募集しておるらしい」

 

 鬼は、異国から流れ着いた人らしい。当時はギリシャ人や白人もアジア地域に来ていた。浦島の太郎という男も海の向こうへ旅立って戻って来ないという。むかし金太郎と呼ばれていた坂田金時が頼光の隊に加わった。「彼」も仲間の3人と参加した。

 

 大江山の鬼退治は無事終わった。頼光一行は都に戻り大歓迎を受けた。「彼」も褒美をもらった。金時が「これからどうする?」と聞いた。少し考えたが、おとうが見つからない今、田舎の祖父母のことが心配になり、結局帰ることにした。

 

 田舎でも鬼退治の話は伝わっており、村中から歓迎を受けた。もはや「彼」は村の英雄だった。出生にまつわる噂は、「川から大きな桃が流れてきた」「おばあさんが桃を切ると中に赤子がいた」話に変わり、「桃太郎」という昔話になった。

 

 めでたしめでたし